ローズマリー Rosmarinus
officinalis
ローズマリーは、石が多く乾燥した日当たりの良い荒地に好んで生育するハーブです。固く細長い葉を沢山つけた茎は、90センチほどの高さにまで生長し、3月から5月にかけて、淡いブルーの小さな花を咲かせます。地中海地域が原産ですが、料理での需要が高いこともあり、現在では世界中で栽培されています。エッセンシャルオイルは、主に地中海西部沿岸で生産されています。このうちチュニジア産のものが最もカンファー含量が少ないことから、アロマテラピーに一番適しているとされています。
ローズマリーのエッセンシャルオイルは、クールで清涼感のある染み透るような香りが特徴です。フトモモ科のユーカリにも良く似た香りです。アロマテラピーにおいては、ラベンダー、ティートリーに次いで頻繁に使われるエッセンシャルオイルの1つです。
ローズマリーのスーっとした刺激のある香りには、意識をはっきりさせる優れた作用があるため、勉強部屋や仕事場の香りとして最もお勧めできるエッセンシャルオイルの1つです。脳内の大脳辺縁系には、海馬という記憶を司る組織がありますが、ローズマリーの香りは、この組織に働きかけて記憶力や集中力を高める効果があるとの実験結果があります。受験生の方や、少し無理をしてでも集中して仕事を片付けたいときに、とても強い味方になってくれます。アロマランプで香らせたり、ティッシュやハンカチに1、2滴落として芳香浴してください。眠気を催してしまう時にも、ローズマリーの香りは助けになってくれます。
ローズマリーは、朝の寝起きが悪く、目覚め後しばらくぼーっとして頭が働き出すまでに時間がかかってしまう人にも同様に役立ってくれます。マグカップにお湯を注ぎ、1、2滴落として立ち上ってくる香りを浴びると、目覚めを促して、意識をはっきりとさせてくれます。電気ポットのお湯を使えば、慌しく時間のない朝にも手軽に効果を得ることができます。海外旅行の際にも、同じように使うと時差ぼけ解消に役立ちます。朝風呂に入る場合は、3〜5滴程度落として、良くかき混ぜた後、熱めのお湯に浸かると効果的です。眠気をさまし注意力を高めてくれることから、車の運転中の香りとしてもおすすめです。
またローズマリーの香りは、精神的に疲労してしまっているときや、覇気がなくなってしまっているときに、元気付けて気力を蘇らせてくれる働きがあります。
その他、ローズマリーは、女性の生理時、スポーツの前後、頭が重いときなどに、マッサージやアロマバスで良く使われるエッセンシャルオイルです。
エジプトのファラオの墓から副葬品としてローズマリーの小枝が見つかっています。古代ギリシアでは、宗教儀式の薫香としてローズマリーの小枝を燃やして使用していました。古代ローマでも、ローズマリーの香りには悪魔祓いをする力があると考えられ、やはり宗教儀式に使われていました。
中世のころには、感染症の治療と予防の目的にローズマリーが使われるようになりました。1348年にヨーロッパでペストが大流行した際には、アンジェリカ、レモン、ラベンダーと共にローズマリーが薬草として用いられました。フランスの病院では、病室の殺菌を目的に、ローズマリーの葉を焚く習慣が比較的最近まで続いていました。
ローズマリーに纏わる逸話の中で最も有名なものが、ハンガリーの王妃、エリザベートが使った「ハンガリアンウォーター」(別名、「ハンガリー水」「ハンガリー王妃の水」)のエピソードです。エリザベート王妃は、ローズマリーを主成分としたハンガリアンウォーターをスキンケアに使って、肌の若々しさを取り戻し、70歳の時にポーランドの国王からプロポーズされたと言い伝えられています。
ローズマリーのハーブは、料理にも古くから利用されていますが、これは単に料理に香りを添えるだけでなく、同時に肉の腐敗を遅らせる働きもしています。
ローズマリーという名前はラテン語で「海のしずく」という意味の言葉「ロスマリヌス」に由来しています。これはローズマリーが地中海沿岸の海辺に好んで生育することと、淡いブルーの小さな花が海の色を連想させるためだと言われています。後にキリスト信仰が広まったヨーロッパでは、ローズマリーという名前から、「聖母マリアのバラ」(ローズ・オブ・マリア)の別名が生まれ、迫害を受けてエジプトへ逃る途中のマリアが、野宿のために自分の青いマントをローズマリーの上にかけたところ、それまで白かったローズマリーの花が、一夜のうちブルーに変わったという伝説が誕生しました。
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